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ルボロー 飛行船の乗客で、若き考古学者 モンスターのルーツを調べるため 世界中を旅している
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「……どういうこった」 デルフはブラックアウトの側面、使い魔のルーンをスキャンしつつ呟く。 ここ数日、このルーンの正体が何なのかを突き止めようと試みていた彼であったが、その結果は芳しいものではなかった。 データ中に存在する如何なる言語とも合致せず、また紋様としても余りに規則性に欠けるそれは、単なる油汚れに見えない事もない。 しかしデルフには、奇妙な確信が在った。 自分は、これを知っている。 過去にこのルーンと、密接に関わった事が在るのだ。 だが何時、何処で? 幾ら考えても、システムの大部分を自己解析に回しても、その答えが得られる事は無かった。 しかし、解析を続ける中で解った事も在る。 デルフは腕を伸ばして装甲に触れつつ、視界に映るルーンの端を拡大。 更にスキャン結果と照らし合わせ、ある結論に達した。 「内側に……続いてやがる……」 解析の結果、装甲表面に刻まれているのはルーンの極一部であり、その殆どは装甲の『内部』に刻まれている事が判明したのだ。 通常、こんな事は在り得ない。 ルーンとは使い魔を識別する為のものであり、遵って必ず表皮へと刻まれる。 しかし目前のそれは、その法則から完全に逸脱していた。 ブラックアウトの外観を考えれば問題は無いかもしれないが、ルーン本来の役割から考えるならば異常に過ぎる。 だが異常とはいえルーンが刻まれた以上、その全体像を確認する方法がある筈。 そしてデルフには、その方法の見当が付いていた。 ……しかし。 「その為に正体を現せってのもなぁ……」 確認の為には、その真の姿を晒す必要が在る。 しかし当のブラックアウトが主たるルイズにその姿を見せていない以上、ルーン確認の為だけに正体を現す事は在り得ない。 ブラックアウトが正体を現すとすれば、それは目撃者を確実に消去できる状況か、或いは大規模な戦闘に関与する場面のどちらかだろう。 一度人目に付いたのならばともかく、特に緊急時という訳でもない現状にてその様な行動に出る事は考えられない。 因って今の所、ルーンの正体についての真相究明はお預けという状態である。 だが――――― 「……まぁ、いいさ」 装甲から手を離し、ブラックアウトに背を向けたデルフは、確信を込めて呟く。 「『使い手』じゃねぇ事はハッキリしてるしな……」 そう、たった1つだけ、デルフは確信していた。 ルーンが刻まれているのは、左手ではない。 それだけがこの使い魔のルーンについて、現時点でデルフが理解し得る全てであった。 部屋へと戻る彼の上空で、青い双眸が光った事に気付く者は居ない。 否、唯一ブラックアウトだけは気付いていたかもしれないが、しかしながら警告が発せられる事は無く。 彼が悲劇を避けるには、全てが余りに遅すぎた。 あの決闘からというもの、ルイズの日常は今までに無いほど充実していた。 トライアングルメイジ2人を打倒し、更にその使い魔は正しく強力無比。 彼女を『ゼロ』たらしめている失敗魔法も、見方を変えれば短時間の詠唱で対象との距離を無視した遠隔爆破を可能とする強力な攻撃魔法と捉える事が出来る。 そして何と言っても、実力的に格上の相手にも臆する事無く向かって行く、その誰よりも貴族たらんとする精神。 それらの事柄から、彼女は学院で一目置かれる存在となっていた。 彼女に付き纏っていた『ゼロのルイズ』という蔑称も消え去りこそしなかったものの、今ではある種の畏敬の念を以って呼称されるまでになっている。 そして何より級友達が、気絶した自身とギーシュを守ってくれたという事実、今では自身を1人のメイジとして扱ってくれるという現状が、ルイズに確かな充足感と自信を齎していた。 加えて、『土くれのフーケ』捕獲という大手柄。 今やこの学院に於いて、ルイズを真の意味で『ゼロ』と蔑む者は殆ど居ない。 彼女は初めてメイジとして、真に他者と対等の立場を手に入れたのだ。 しかしルイズが無意識の内に何よりも望み、何より得難く、そして漸く手に入れたもの。 それは立場などではなく――――― 「あらルイズ、今朝は寝坊しなかったのね」 「うるひゃいわねー、きゅるけぇー」 『友人』だった。 「何よルイズ、昨日も徹夜したの?」 「そーなのよ。この娘ったら近頃毎晩毎晩……」 「ま、毎晩……?」 「そう、夜な夜な部屋で……」 「『部屋で』? 『毎晩』ッ? 何よ、何してるのよ!?」 「そりゃあ貴女、年頃の娘が、ねぇ」 「……あぁ」 「んー…」 以前から宿敵同士という間柄であったキュルケ。 ギーシュとの交友を通じて親しくなったモンモランシー。 更に――――― 「……『ハッピータイム』」 「うわ! 何時の間に!」 「あらタバサ、おはよう」 「おはよう」 キュルケの親友にして、決闘以降というもの妙にルイズ達を気に掛けるタバサ。 そして――――― 「き、君達……何というか、もう少し慎みを持ってだね……」 「あらギーシュ、居たの?」 「おはよう、ギーシュ。でも貴方にだけは言われたくないわね」 「二股男」 「……酷い」 同じく決闘からの友人関係であり、同時にデルフの悪友でもあるギーシュ。 彼等4人とルイズは各々自覚こそ無いものの、今や親友と言って差し支えない程の親密さを持っていた。 更に言えば、モンモランシーを除く4人には共通の秘密が在る。 異世界である『地球』の技術による産物が、このハルケギニアに点在する可能性を知る者達。 その危険性、異質性を知り、今も暇さえ在ればいずれかの部屋にて、デルフの講義を受ける日々を送る彼等。 同じ秘密を共有するという奇妙な連帯感が、結果として彼等の交友関係をより強固なものとする事に一役買っていた。 特にルイズはデルフの主という事も在って、毎夜遅くまで己の護衛たるインテリジェンスソードによる講義を受けている。 「……ところで『ハッピータイム』って何よ」 「……大きな声では言えない」 「ああ、それはデルフがってええぇぇッ!?」 「このバカッ、何でアンタはそう口が軽いの!」 「だ、だからって燃やすかね!? アフロになるところだったじゃないか!」 「……? アフロって何?」 「ぅるしゃーいっ! ねれにゃいんらきゃらひじゅかにひらはいひょーっ!」 尤も講義内容が脱線する事も多く、余計な知識と誤解が多々生じているとの問題点が在るが。 因みに当のデルフは、今この場―――――教室には居ない。 護衛の任を放り出して今、彼が何処で何をしているのかというと――――― 「きゅいきゅいきゅいきゅい!」 「どああああああ放しやがれバカ竜ごあああああああッ!」 「きゅきゅきゅいきゅいぃきゅい!」 「それは俺の所為じゃねーだろーがああああぁぁぁぁッ!?」 「きゅいい! きゅきゅきゅいぃぃぃっ!」 「分かる! その気持ちは分かるから放せってうわなにをするやめ」 「きゅきゅい! きゅいぃきゅい! きゅいぃぃっ!」 「あ、相棒ーッ! 助けてくれッ、あいぼーッッ! ってぎぃぃやあああぁぁぁぁぁッ!?」 早朝にルーンの解析を終えルイズの部屋へと戻ろうとしたところでシルフィードに見付かり、言葉を話せない事への鬱憤を自由に話せるデルフへの八つ当たりという形でぶち撒けられ、ついでに話し相手兼玩具として銜えられた状態で振り回されていた。 傍から見れば、風竜に銜えられたインテリジェンスソードが悲鳴を上げながら振り回されるという、奇怪極まりない光景である。 なまじ人目が在る為に剣型をとっている事も在り、抵抗すら出来ないデルフはシルフィードの為すがまま。 当人にとっては悲劇、周囲にすれば喜劇。 結局この騒ぎはブラックアウトが、ローターブレードを展開した際の一撃をシルフィードに見舞うまで続いた。 心身共に充実した、ルイズにとっての素晴らしき日々。 しかしこの日、今は亡き国王の忘れ形見であるアンリエッタ姫殿下がトリステイン魔法学院を訪れた事によって、平穏な日常は終わりを告げた。 深夜、アンリエッタが退出したルイズの部屋に、デルフの声が響く。 「んで、タバサとキュルケの嬢ちゃんにも声掛けるんだろ?」 「はぁ? アンタ何言ってんの?」 その言葉に眉を吊り上げ、声を荒げるルイズ。 アンリエッタを尾けていた事がばれ、ルイズの回し蹴りを受け床へと倒れ伏していたギーシュも、何とか持ち上げた顔に怪訝そうな表情を浮かべている。 「話、聞いてたでしょ? お忍びなのよ、お・し・の・び! 『これ』はもうしょうがないとして、キュルケ達を連れて行ける筈無いじゃない」 「『これ』って……」 「惚けた事言ってんじゃねえ、娘っ子。アルビオンだぜ? 内紛真っ最中だ。王党派が負けりゃあ、宝物庫の中身も貴族派のもんになっちまう」 「……そりゃあ……そうでしょうね」 「デルフ、君は何が言いたいんだい?」 心底解らないとでも言いたげに首を傾げる2人に、デルフは溜息を吐いて語り始めた。 「此処の宝物庫には何が在った?」 「……あ!」 「へ? 何よ?」 ルイズは未だに解らないという顔をしているが、ギーシュは気付いたらしい。 ルイズの方へと顔を向け、捲し立てた。 「『火竜の息吹』だよ! 『火竜の息吹』と『破壊の槍』! 況してや王家の宝物庫なら……!」 「……あ、あぁ! そっか!」 「ま、そういうこった。これについちゃ隠し事無し、って約束だったろ」 「うー…でも……」 「別に任務の内容まで明かせとは言ってねえ。アルビオンに行って王党派の宝物庫から火事場泥棒するって言やぁ良いじゃねーか」 「かかか火事場泥棒って何よ!」 むくれるルイズに、デルフは言い聞かせる様に語り掛ける。 その様子は兄妹、もしくは親子にも似て、ギーシュはおかしくなって小さく噴き出した。 そして、翌朝――――― 「嗚呼……ごめんよヴェルダンデ……不甲斐無い僕を許しておくれ……」 つぶらな双眸が哀しげにギーシュを見上げ、置いていかないでと懇願していた。 ギーシュはその目に涙さえ浮かべ、離れたくないとばかりにジャイアントモールを抱き締める。 「こんな……こんな事って!」 「さっきまでそれに押し倒されてた私は無視か、こら!」 背後から股間を蹴り上げられ、ぬふぅとの呻きを残し崩れ落ちるギーシュ。 この暴挙を為したルイズの着衣は乱れに乱れ、その息は荒く、肌には汗が滲んでいる。 一部幼女趣味の諸兄に於いては前屈みになる事請け合いの様相であったが、実際にはアンリエッタから受け取った『水のルビー』に反応したヴェルダンデに押し倒されたという、色気もへったくれも無い経過の結果だった。 しかし、知らぬ者からすれば情事の後にしか見えぬ事は請け合い、完璧に誤解されるだろう。 事実、そうなった。 「ル、ルイズ……それは、一体?」 「え?」 懐かしい声に振り返れば、其処に居たのは昨日目にした己の婚約者。 彼は震える指でルイズを指し、次いでギーシュとヴェルダンデを指す。 ルイズが再起動を果たし、漸く弁明を始めようとした矢先。 「決闘だッ!」 「ぅえええぇぇぇぇッ!?」 「落ち着いてワルドォォォォッ!?」 結局、彼等が学院を発ったのはそれから30分後の事だった。 学院長室の窓からルイズ達を見送るアンリエッタは、始祖ブリミルに一行の無事を祈る。 しかし隣から響いた小さな悲鳴に、彼女は視線を尖らせて老メイジを睨んだ。 「見送らないのですか? オールド・オスマン」 「ふ、ぐ……ほ、ほほ……み、見ての通り、この老いぼれはそれどころではないのでしてな……」 手で鼻を覆い、涙目で応えるオスマン。 右手の小さなピンセットには1本の鼻毛、声は微妙に震えている。 余程キツい衝撃だったらしい。 アンリエッタが呆れて首を振ったその時、血相を変えたコルベールが学院長室へと飛び込んでくる。 「一大事ですぞ! オールド・オスマン!」 「何じゃね、騒がしい」 「フーケが脱獄しました!」 彼の齎した情報は、チェルノボーグの牢獄に収監されていたフーケが、貴族の手引きによって脱獄したとのものだった。 即ち、城下に裏切り者が居る事になる。 青褪めるアンリエッタ。 しかしオスマンは特に気にした素振りも無く、手を振ってコルベールに退室を促した。 何故かコルベールもあっさりとそれに従い、学院長室には静寂が戻る。 アンリエッタは苛立たしげに、オスマンへと噛み付いた。 「これは間違い無くアルビオン貴族の暗躍です! 何故そうも落ち着いていられるんですの!?」 「これこれ、姫。この国の頂点に立つ貴女がそう感情を露にしては、色々と不都合ですぞ」 オスマンの言葉にぐ、と詰まるアンリエッタ。 その顔に浮かぶ苦々しい表情を微笑ましく思いながら、オスマンはひとつ、彼女を勇気付ける為の言葉を紡ぐ。 「何、ミス・ヴァリエールの使い魔が居れば、何も心配する事は在りませぬ。あれに太刀打ち出来るのはエルフくらいのものですじゃ」 「……ルイズの?」 その言葉が意外だったのか目を丸くするアンリエッタに、オスマンはおや、と首を傾げる。 「殿下は彼女の使い魔を御覧になっていないので?」 「ええ……部屋には何も居ませんでしたし……」 心底残念とでも言いたげに、アンリエッタは肩を落とす。 その様子を見たオスマンは、この程度なら話しても良いかと、予め脳裏で組み立てた文章を読み上げた。 「彼女の使い魔は特殊でしてな。このハルケギニアに存在するものではないのですじゃ」 「それは……どういう事です?」 「つまり、異世界から来たものという事ですじゃよ」 今度こそ驚きに目を瞠るアンリエッタ。 オスマンは、尚も言葉を続ける。 「この世界の常識には当て嵌まらない存在でしてな……あれならば、どの様な危機が襲ってこようと乗り越えられるでしょうな」 「異世界……」 小さく呟き、アンリエッタは再び窓の外を見遣る。 ルイズ達を乗せたグリフォンと馬は、既に豆粒ほどの大きさになっていた。 「その様な世界が在るのですか……」 確かめる様にその言葉を声に乗せ、彼女は目を閉じた。 「ならば祈りましょう。異世界から吹く風に」 「そよ風程度で済めば宜しいのですが、な」 祈りが届く様な相手ではない。 オスマンのその呟きが、アンリエッタの耳に入る事は無かった。 「そろそろね」 何かを探す様に首を動かすルイズにワルドは内心、何をしているのかと訝しんだ。 学院を出立してまだ1時間、ラ・ロシェールまでの行程、その10分の1にも達してはいない。 一体何を探しているのか? 「ルイズ、さっきから一体何を……」 「居た!」 突然、視界の端に映る森を指差し、ルイズは叫んだ。 それが余りにも唐突だった為に面食らったワルドは、続くルイズの言葉を素直に受け入れてしまう。 「降下して! あの森、あの空き地よ!」 「わ、解った」 ルイズは地上を行くギーシュに合図を送り、徐々に大きくなる灰色の鉄塊と、その側に佇む赤と青の人物を見遣る。 そして20分後、静かな森にターボシャフト・エンジンの立てる轟音が響き渡った。 ラ・ロシェールの裏通りに店を構える『金の酒樽亭』。 其処でフーケは1人、舐める様に酒を飲んでいた。 背後では傭兵達が、文字通りの泡銭で宴会を繰り広げている。 気持ちは解らないでもない。 大金を積まれて雇われたにも拘らず、当の雇い主は中止を伝えると金はそのままにさっさと退場してしまったのだ。 降って湧いた幸運に、傭兵どもは歓声を上げて飲み会を始める。 フーケはそれに参加する事もなく、酒を飲みつつ思考を廻らせた。 ……他に選択肢が無かったから着いて来たが、いきなり中止とはどういう事だ。 当の仮面野朗も姿を消しちまうし、これからどうすべきか。 それだけを考えると、彼女は大きく溜息を吐く。 その音は宴会の喧騒に紛れ、誰の耳にも入る事は無い。 とにかく、再びあの化け物に相対する事は避けられた訳だ。 仮面野朗は此方を仲間に引き込んだつもりだろうが、生憎こっちは妄想に付き合うほど酔狂ではない。 このまま何処かへと…… そう考えたその時、背後の傭兵達の中から無視出来ない名称が飛び出した。 「ウエストウッド? 何だそりゃ」 「知らないのか? 貴族派も王党派も、あそこを巡って何度も戦り合ってるんだ。何か目的が在るんだろうが、それが何かは……」 「はぁ?」 「俺ぁ知ってるぜ。あすこにゃバカみてぇに強ぇガキとバケモンが居やがんだ。貴族派に付いてた奴から聞いたが、向こうの調査隊がほうほうの体で逃げ帰ってきたとよ」 「ガキはともかく……バケモン?」 「ああ、何でも―――――」 「銀色のやたら速いゴーレムらしいぜ」 フーケの行き先が、決まった。 ブラックアウトの機内は、タバサの『サイレンス』によって静寂が保たれていた。 こうなる事を見越していたキュルケとギーシュは、タバサに倣って持ち込んだ本へと目を落とし、ルイズはコックピットでモニターを睨んでいる。 ワルドはというと、予想だにしていなかった展開に若干呆然としており、周囲を埋め尽くす金属の構造物を食い入る様に観察していた。 そう、ルイズ達は初めからラ・ロシェールに向かうつもりなど無く、ブラックアウトで一息にアルビオンへと飛ぶつもりであった。 早朝からローターの騒音を響かせては怪しまれるどころの騒ぎではない為、多少無理は在るが深夜の内にブラックアウトを学院近郊の森へと移動させる 翌朝、シルフィードに乗ってキュルケとタバサが先行、ルイズとギーシュは後から馬で合流する計画だったのだ。 これは学院の何処かから見ているであろうアンリエッタの目を掻い潜る為とのデルフのアドバイスであったが、結果としてワルドの合流を助ける事となった。 そしてグリフォンを置いて行く事を渋るワルドを4人掛かりで説き伏せ、漸く離陸と相成った。 それから、約7時間後――――― 機内に、赤いランプが点った。 タバサが『サイレンス』を解除すると同時、ローターの騒音が機内を満たす。 一瞬、顔を顰めた4人だったが、ルイズの叫びに銃座の小さな窓へと噛り付いた。 「見えたわ! アルビオンよ!」 彼等の眼前に、戦火に覆われる『白の国』が浮かび上がる。 ブラックアウトは上昇し、大陸の上側へと向かった。 「スカボローは……無いな」 銃座から地上を見下ろし、ワルドは呟く。 流石に都合良く位置を特定する事は出来なかったようで、本来船が着くスカボローの港からは随分と南に着いてしまったらしい。 「ロサイスの近く……か? 不味いな、あそこは貴族派の拠点だ」 「そ、それはかなり不味いのでは?」 「近くに竜騎兵は居ない様だ。このまま北上すれば問題は無い」 ワルドはコックピットへと向かい、ルイズの耳元で方角を告げる。 ルイズは頷きをひとつ返すと、ブラックアウトへと命令を下した。 「このまま北上よ。町が見えたら東へ迂回して」 その命令に従い、ブラックアウトは速度を上げる。 そのセンサーに一瞬、強大な反応が掛かったが、命令を優先したブラックアウトはそれに対する調査を保留にした。 そしてルイズもまた、モニターに映る光点に気付く事は無く。 やがて眼下にスカボローの町が映り込み、ブラックアウトは緩く東へと旋回した。 貴族派に雇われた傭兵達が虚ろな表情で背を向け、街道を退却してゆく。 その身体には無数の傷が刻まれ、中には腕や脚が折れたまま去ってゆく者も居る。 その異様な姿を見やりつつ、少年は傍らで沈痛な表情を浮かべる少女へと声を掛けた。 「仕方ないさ。あいつらにまで治療を施してたら、指輪の魔力なんかあっという間に無くなっちまう」 「うん……」 それでも表情の晴れない彼女に、少年は話題を強引に変える事で場の空気を打ち破ろうとする。 「それにしてもしつこい連中だな。毎度毎度、無駄だって解らないのか」 「……」 「記憶を消し損なった奴を逃がしたのが不運だったかなぁ」 「……」 どうやら失敗したらしい。 少女は更に沈痛な表情を浮かべ、完全に押し黙ってしまった。 少年は慌てて彼女の擁護に回る。 「だ、大丈夫だって! 『俺達』が居れば傭兵だろうが貴族だろうが」 「サイト」 少女は少年―――――サイトの言葉を遮り、唐突に頭を垂れた。 「ごめんなさい……私が……私が、勝手な都合で貴方を喚んだから……」 「ストップ」 謝罪を続ける少女の言葉を、今度はサイトが遮る。 きょとんとする彼女に、サイトは薄く笑みを浮かべて優しく言葉を紡いだ。 「それは気にしてないって言ったろ? 元はといえば此処に攻めてきた連中が悪いんだし。それに『俺達』が居なかったら、テファ達がどうなったか解らないだろ」 「それは……そうだけど」 尚も罪悪感に苛まれる少女―――――ティファニア。 彼女が被る帽子の上へと軽く左手を置き、サイトは続ける。 その手の甲には、奇妙なルーンが刻まれていた。 「それに……その、この状況を招いたのは、間違い無く『俺達』だと思うんだよね。いや、その、やり過ぎたと言うか、暴れ過ぎたと言うか」 「……」 しどろもどろのその口調に、ティファニアは初めてくすり、と口元を綻ばせる。 それを見て安心したのか、サイトもまた表情を緩めた。 その時2人の背後から、このハルケギニアには存在しない筈の音が響く。 甲高く、力強い2.4L直列4気筒DOHCエンジンの音。 そしてクラクション。 それらの音に、サイトは子供の様に表情を輝かせ、弾んだ声でティファニアへと語り掛けた。 「それにさ! ずっと夢だったんだ! こういうスゲェ車に乗るのがさ!」 その妙に子供っぽく、しかし嘘偽り無い本心からの言葉に、ティファニアは今度こそ声を上げて笑う。 暫くの後、ドアの閉まる音が2つ響き、エンジン音は余韻を残して森の奥へと走り去った。 浮遊大陸アルビオンの一地方、サウスゴータに点在する小さな村々のひとつ、ウエストウッド。 その村の占拠を図った者達が王党派、貴族派を問わず壊滅に近い損害を受けて敗走するという事態が起こり始めてから約2ヵ月。 両陣営の注目がニューカッスルへと移った今尚、村を守る凄腕の若き傭兵と銀のゴーレムの噂は、ロサイスの街を賑わせていた。 曰く、少年は剣を、槍を、弓を、あらゆる武器を使いこなす。 曰く、ゴーレムは信じられない程の速さで動き、強力な砲と剣を持っている。 曰く、300人の傭兵も、20人のメイジも、果ては小型艦すらも、その化け物達には通用しなかった。 人々は噂を交わす。 横暴な貴族派が、そしてメイジ達が手玉に取られているという、痛快な笑い話として。 たとえ作り話であろうと、こんな愉快な話は無いと。 それが真実であったと人々が知るのは2日後、ニューカッスルでの決戦が始まってからの事であった。
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前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ 《父よ、御心ならばどうぞ、この杯を私から取りのけて下さい。 しかし、私の思いではなく、御心が成るようにして下さい》 (新約聖書『ルカによる福音書』第二十二章より) 時はヤラの月半ばの深夜、ところはスカボローから50リーグ手前の丘陵地にある谷間の隘路。 『東方の神童』松下率いる『千年王国』軍団1000人と、『東方の王』バエル率いる66個の悪魔軍団が激突する! その谷の奥、月光も射さぬ暗闇の中では、『虚無の担い手』ルイズが街道の石畳に座っていた。 切り札の『虚無の呪文』を長々と詠唱しながら、アルビオン大陸を縦横に走る『霊脈』をとらえ、魔力を吸い上げているのだ。 ―――――この丘陵地は上空から見ると、頭をスカボローに向けて仰向けに横たわった女性の体にやや似ていた。 隘路を挟んで並んだ双丘は、かつては『妖精女王の乳房』と呼ばれ、平民から信仰の対象にもなったという。 その中心にいるルイズが呪文を唱えるたびに、そこに集まる霊脈の力は強まる。霊脈の上には、街道が走っている。 活性化した霊脈の周りでは大地が熱を持ち、降り積もった雪が溶けて春の草花が咲き乱れ、蟲たちが目を覚ましている。 40リーグも彼方に駐屯していた七万の軍勢は、その魔力に魅了され、ルイズの方へと引きずり寄せられていた……! 「おお、俺は呼ばれている」「召されている」「彼女が喚(よ)ばわっているぞ!」「うわーっ、たまらん!いい気分だ!」 「俺が必要とされているんだ!」「いいや、呼ばれたのはこの俺だ!」「ばかな、俺だ俺だ!」「あたしが呼ばれたのよ!」 「彼女を迎えに行こう!」「そうだ、あそこへ帰ろう」「彼女のもとへ還ろう!」「そうだそうだ!」 将軍も士官も兵士も捕虜も、老いも若きも男も女も、人も亜人も動物も幻獣も、さかりがついたように駆け出す! 彼らはみな猛り立ち、勇み立ち、いきり立ち、熱狂し、本能に衝き動かされて走り出す! ああ、誰も彼もが彼女に召し寄せられ、喚び寄せられる! 地響きを立て、荷物を打ち捨て、七万人と無数の獣たちが40リーグ先のルイズの胸元へ、飛ぶように駆けてゆく! 竜や幻獣、軍馬などは、騎手を振り落とす勢いで先を急ぐ。亜人は大股で走り、牛や犬がそれに続く。 アルビオン軍四万が前に、反乱したトリステインの兵やサウスゴータ市民や捕虜たちが後になり、ぞろぞろと駆けてゆく! 《谷神は死せず、これを玄牝と謂う。玄牝の門、これを天地の根と謂う。 綿綿して存するごとく、これを用いて勤(つ)きず》 (『老子道徳経』より) 「「むぅ、なんじゃあこの異様な気配は!? 魔力が吸い取られる心地じゃ! マツシタよ、その谷間には、いったい何がおる!?」」 「さあな、聖母なのか大淫婦なのか! まあ待っていろバエル、今に分かる!」 『炎の杖』を振るう松下は、驚くべきことに大悪魔バエルと互角に渡り合っていた。 教団兵は次々と魔法や銃弾を放って、増え続ける悪霊を撃墜する。対抗して悪霊も魔法を放ち、兵士たちを撃ち殺す。 デカラビアは鳥の使い魔を無数に召喚して悪霊たちの目玉を突つかせ、ブエルは水メイジらとともに負傷者を治癒する。 『ヴィンダールヴ』で潜在能力を引き出されたケルベロスに組みつかれ、さしものバエルもよろめいた。 「「ええい埒が明かん、無理にでも押し通るぞい! 開けゴマ、じゃ!」」 しびれを切らしたバエルの三つの口から、おびただしい蛙とネズミとイナゴが吐き出される! 《第六の天使が、その鉢の中身を大河ユーフラテスに注ぐと、川の水が枯れて『日の出る方角から来る王たち』の道ができた。 私はまた、竜の口から、獣の口から、そして、偽預言者の口から、蛙のような汚れた3つの霊が出て来るのを見た。 これはしるしを行う悪霊どもの霊であって、全世界の王たちのところへ出て行った。 それは、全能者である神の大いなる日の戦いに備えて、彼らを集めるためである。 …汚れた霊どもは、ヘブライ語で『ハルマゲドン(メギドの丘)』と呼ばれる所に、王たちを集めた》 (新約聖書『ヨハネの黙示録』第十六章より) 松下は『炎の杖』を再び回転させて『青銅の蛇』に変え、蛙とネズミとイナゴを呪力で押し返す。 地面やケルベロスのたてがみからは無数の蛇が湧き出し、蟲どもを呑み込んで退治する。 「ははははは、動物を操る『ヴィンダールヴ』に、その術は効かないぞ!」 だが、東の空から激しい羽音が轟き、アルビオン軍にいた竜や幻獣などが飛来する! その眼はぎらぎらと輝き、谷間へ向けて一直線に急降下だ! 「「ひょひょひょ、そちらこそ命運尽きたのうマツシタ! アルビオン軍がこちらに近づいて来るぞ!!」」 しかし、谷間からはぶしゅーーっとガスが噴出され、蚊トンボのように竜たちがぼたぼたと落ちる。 それを浴びたバエルや悪霊どもも、体がしびれて動けなくなる。松下たちは無事だ。 「「な、なんと、このわしが動けんとは……!!」」 やがて彼らは、石化してしまった。『霊脈』から溢れ出た、強力な大地の霊気のようだ。 それに続いて、ぐらぐらと地震が起こる。ルイズは魔力を目いっぱいに溜め込み、ついにゆっくりと立ち上がった。 「……始まったか! よーし諸君、散開して二つの丘の上に登れ! 前方で陥穽と塹壕を守っている者たちには、『錬金』で作った油に火をつけるよう伝えろ! アルビオン軍の本隊が来るぞ!!」 トランス状態に入ったルイズが歩むたびに、膨大な魔力によって大地が揺れる。まるで巨人が歩いているようだ。 口からは『虚無の呪文』が紡がれ、両手は神々しく天に向かって挙げられている。 その右手には杖が、左手には『始祖の祈祷書』があった……。 「《バガビ ラカ バカベ ラマク カヒ アカバベ カルレリオス……》」 松下がルイズのそばに駆け寄ると、ルイズはすーーっと左側の丘に飛び上り、その頂に立つ。 そして松下も、右側の丘の頂に『魔女のホウキ』で飛び上がる。 「メシア、先ほどの戦いでの殉教者は185名。それと、第四使徒ギーシュがモグラのように穴を掘って逃げました」 「分かった、第二使徒シエスタ。殉教者は祝福されて天国に入り、背教者は裁かれるだろう。 ではタルブでの如く、ぼくの体を支えてくれ。バエルとの戦いでかなり傷を負い、魔力を使ったからな」 「はい、メシア!」 ルイズと松下は双丘の上に向かい合って立ち、谷間を挟んで同一の呪文を詠唱する。 ケルベロスは二体の悪魔を左右に配し、四肢を踏んまえて隘路を守るように立つ。 街道の向こうからは、七万人の男女と禽獣が、信じがたい速さで駆けて来る! 彼らは皆、ルイズに呼び寄せられているのだ! 陥穽に嵌った亜人や獣たちを踏み潰し、泥と油と火の中を潜り抜け、40リーグを駆け抜けて、彼らはやって来た! Bagabi Lacha Bachabe Lamac cahi achababa Karellyos Lamac Lamac Bachalyas Cbahagi Sabalyas Baryolas Lagoz atha Cabyolas Samahac atha femyolas Harrahya ついに『虚無の呪文』は完成し、彼らの足下の地面がすっぽりと消失した。 二つの丘の挟間から、『横たわる女性』の丘陵が真っ二つに裂ける。 彼女の胸部から股間まで、巨大な『虚無の深淵の裂け目』が開き、七万人をまるごと混沌の奈落へ呑み込んだ。 その中はあらゆる異なる時空間とつながっており、入ったものを何処とも知れない時空へ転移させる。 始祖ブリミルは、かつて異なる世界から『虚無の門』を潜り、このハルケギニアにやって来たという。 これこそが、極めて不安定で不完全ながら、その門なのだ! 『虚無』とは世界を構成する極微の粒子を操作し、奇跡を起こす魔法。 ルイズが失敗だと思い込んでいた『爆発』も、その粒子が僅かに動いて衝突したために起こったに過ぎない。 『解呪』は自然ならざるもの、呪いを退去させる魔法であり、『幻影』は逆に自然ならざる幻影を招来する魔法。 いずれも『虚無』の魔法の中では、下級のものだ。 だが、この『虚無の門』は上級に属する大魔法。 ルイズがこの撤退戦で溜め込んだ多大なストレスを解き放ち、半日以上かけて呪文を練り上げ、 アルビオン大陸中の『霊脈』とリンクして魔力と血を吸い上げ、メシア・松下の力も借りてようやく発動できた代物だ。 「「汝ら、我らが召喚せし者たちよ!!」」 「「我らは汝らを必要とせず!! 速やかに、在るべき場所へ還れ!!」」 「「異邦人はその故郷に、敵は地獄に、獣は野山に還れ!!」」 「「我らが開きし『虚無の門』を通りて還れ、『送還』!!!」」 二人の力強い声が、闇の中に雷鳴の如く轟き渡る。 『虚無の門』の暗黒が渦巻いて銀色に輝く『送還の門』となり、あらゆるものを呑み込んでゆく。 バエルが、ホーキンスが、悪鬼が竜が亜人が幻獣が牛馬が士官が兵士が捕虜が男が女が、ことごとく呑み込まれる! アルビオン大陸の底が抜け、彼らは無限の深淵へと落下し、奈落の底へ消え失せた。 ある火竜は、いつの間にか生まれ故郷の火竜山脈上空を飛んでいた。 ある軍馬は、いつの間にかゲルマニアの東に広がる草原地帯を走っていた。 石化したバエルと悪鬼は地獄の宮殿に帰り、トリステイン軍の捕虜たちはトリスタニアの練兵場に戻っていた。 『アンドバリの指輪』によって反乱した人々も呪いから解放され、サウスゴータや故国へ戻される。 そしてアルビオンの軍勢は、底知れない地獄へ送られて、堕ちていった……。 それを見守りながら、ルイズの口は『祈祷書』に現れた始祖の言葉を呟く。 『おお、これは我が故郷を思い、編み出したる、大いなる「送還」の魔法。 されど、これを用いて我ブリミルは帰還することあたわざりき。 我にとりて、もはや、かの荒れ果てたる地は故郷にあらざるか? ああ、なれど我が子孫よ、これを覚えよ。 いつの日にか、我がこの世界に現れし場所「聖地」をエルフの手より奪回せよ……』 「ほうほほう、素晴らしい! 『虚無』とはこういう力なのか! とても勉強になったよ!」 その場所から約4リーグ後方の空中、ゲルマニア艦隊旗艦の甲板にて。 オペラグラスと『千里眼』で大異変を見守っていたブラウナウ伯爵は、上機嫌に笑った。 「大悪魔バエル王をも打倒し、七万の軍勢もガダラの豚よろしく、雪崩を打って溺れ死んだか! 小人の王様(アルベリッヒ)と巨人の女王様(タイターニア)が、母なる地獄の釜の蓋を開いたか! ああ、素晴らしい! 本当に素晴らしい!! キキキキキキキ」 「は、伯爵、大丈夫かね?」 「いやいや侯爵、いたって正常ですよ僕は。さて、気を取り直して、後始末をさせてもらいましょうか。 まず、言霊には言霊を、歌劇には歌劇を。ジュリオくん、あの『銃』を持って来てくれ」 「はい、ダニエルさま。ここにございます」 ジュリオが差し出したのは、古ぼけたマスケット銃。新開発のライフリングも施されていない、ただの猟銃だ。 しかし、ダニエル・ヒトラーの『ガンダールヴ』と魔術を組み合わせれば、恐ろしい兵器となる。 「さ、諸君、歌声を合わせて《呪歌》を唱え、戦争と狩猟を讃えよう。 《Das Wild in Fluren und Triften,Der Aar in Wolken und Luften…》」 《Mein Sohn, nur Mut! 耐えよ、勇気を持て! Wer Gott vertraut, baut gut! 神を信じる者は行わん! Jetzt auf!In bergen und Kluften, いざ行かん!山にも谷にも喜びは溢れ、 Tobt morgen der freudige Krieg! 明日こそ、うれしき戦の日! Das Wild in Fluren und Triften, 森や牧場の獣ども、 Der Aar in Wolken und Luften, 空を翔け行く鷲や鷹、 Ist unser, und unser der Sieg! 勝利は我らがものなるぞ! Lasst lusting die Horner erschallen! 角笛よ、高らかに鳴れ! Wir lassen die Horner erschallen! 角笛よ、森に谺せよ!》 (カール・マリア・フォン・ヴェーバー作曲のドイツ歌劇『Der Freiscutz(自由射撃/魔弾の射手)』より) マスケット銃に込められているのは『魔弾』。嵐の悪魔ザミエルの呪いを受け、自在に獲物を仕留める弾丸だ。 ヴェーバーの歌劇の舞台は三十年戦争終了頃のボヘミアで、作られる魔弾も七つきりだが、 元来の18世紀の伝説では七×九、つまり六十三発の『魔弾』が作られたという。 それに歌劇では、射手の恋人アガーテは魔弾から守られるが、本来の伝説では彼女は撃たれて即死し、射手は気が狂う。 「僕に恋人などいないし、悪魔は僕の下僕だ。六十三発の全てが僕の意のままに命中する! まあ、『ガンダールヴ』の僕には一発で充分かな。距離は4リーグ、問題なし。 恋人とは違うかも知れないが、ヒロインのルイズ・フランソワーズもついでに始末するか。 松下の体を支えている、あの女信者もな! さあて、鉄の杖は振るわれ、審判の日の最後のラッパは、今こそ鳴るぞ!」 マスケット銃を構えると、ダニエル・ヒトラーの右手にある『ガンダールヴ』のルーンが強い光を放つ。 「《Es sei!!bei den Pforten der Holle! よかろう!地獄の門にかけて!》 自分で蓋を開けた魔女の釜の底へ、地獄へ堕ちろ、松下一郎!!」 運命の魔弾が一発、マスケット銃から放たれた! 双丘の頂上にて。 松下は満身創痍で力を使い果たし、目を閉じてぐったりとしている。シエスタは松下の体を抱きかかえるように支える。 ルイズは微動だにせず、あの『始祖像』のように両手を広げて立ったまま気絶している。 何が起きたのかは分からないが、あの悪魔どもとアルビオンの大軍は、メシアの奇跡によって残らず地獄へ消え去ったのだ。 食い止めるどころではない、殲滅だ。これでスカロンやジェシカたちも逃げ延びられるだろう。 トリステインがガリアとゲルマニアに攻め込まれても、故郷のタルブだけはきっと無事だ。 このメシアが、神の祝福を受けてこの世界に現れた人類の救世主が、その知恵を以って都市を築きあげた『聖地』なのだから。 そうだ、『千年王国』では平民も貴族も王族も、みな同胞となる。貧困も病気も、様々な悪徳もそこでは見られない。 老人も不具の人も蔑まれず、自由な人民が共に和して、主なるメシアのもとで賢い政治を行うようになろう。 ブリミル教会が説いてきた偽善的な教えは、この新しい真理にすぐ塗り替えられる。悪はことごとく滅び、罪は赦される。 世界は一つとなり、千年、いや未来永劫に渡って、神とメシアの支配による繁栄が続く。時は止まり、歴史は終焉を迎えるのだ! シエスタは狂おしいほどの歓喜のあまり、思わず叫んだ。 「ああ、メシア! 戦いは、世界革命はこれからです! この輝かしい勝利の福音を世界中に告げ知らせ、誰もが成し得なかった地上天国を完成させましょう!」 だが、凶弾が背後から、ルイズ・フランソワーズの胸を貫く。 その血が噴き出すより早く、松下一郎の心臓に『魔弾』が命中し、貫通する。 そしてもちろん、彼を抱きかかえていた第二使徒・シエスタの胸をも。 「………え」 「………う」 「………!」 三人は同時に倒れ、丘の下の谷間にまだ開いていた『送還の門』へと崩れ落ちる。 事態を一瞬で理解したシエスタの、呪わしい断末魔の絶叫が、最期に響いた。 「神よ、神よ、何故我を見捨てたもうた!!」 その声を残して、三人は何処とも知れない奈落の底へと堕ちていった……! 残された『千年王国』軍団に、空から鉄の雨が降り注ぐ。 ゲルマニア軍の艦隊からの機銃掃射だ。やがて焼夷弾や爆弾も次々と落下し、一木一草も残さず焼き払われる。 さてその頃、スカボローにいるトリステイン軍の総司令部は、焦りに焦っていた。 フネはある、あるにはあるが、ありったけの風石をかき集めても、ぎりぎり本国へ戻るには足りない。 このまま出港しては海に落下してしまう。小型船で総司令部だけ出発しようとしたが、それを知った兵士たちが暴動を起こす。 そこへ、見覚えのある十数隻の艦隊が港の外の空中に現れた。旗は青地に白百合、トリステイン王国の旗だ。 「おお、あれは我がトリステインの軍艦だ! ロサイスから脱出して、生き残っていたか!」 「そうだ、もう助けが来るころだと思っていた! 万歳、始祖ブリミル万歳!!」 「これで帰れるぞ! アンリエッタ女王陛下万歳!!」 「おーい、ここだ! ここだ! 助けてくれーっ!」 しかし、するするとトリステインの旗は降ろされ、代わってアルビオン共和国の三色旗と帝政ゲルマニア国旗、 それに『鉤十字(ハーケンクロイツ)』の旗が掲げられる。将軍や兵士たちの表情が、凍りついた。 数十隻に増えた艦隊は揃って横腹を向けると、火砲の口を港に向けて、一斉に砲弾を放った。 (つづく) 前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ
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2013/05 Go!Go!Guitar 詳しくはヤマハミュージックメディア 今月の大注目! 《Close Up Release》 SPYAIR ニューシングル「サクラミツツキ」 050 サクラミツツキ/SPYAIR テレビ東京系アニメ『銀魂』オープニングテーマ 052 Turning Point/SPYAIR ダイスケ ニューアルバム『星のドロップス』 054 晴れ空のマーチ/ダイスケ 056 Moshimo/ダイスケ テレビ東京系アニメ『NARUTO-ナルト- 疾風伝』オープニングテーマ 057 五畳半とラヴソング/ダイスケ ONE OK ROCK ニューアルバム『人生×僕=』 058 The Beginning/ONE OK ROCK 映画『るろうに剣心』主題歌 059 Deeper Deeper/ONE OK ROCK スズキ「スイフトスポーツ」CM ソング 062 the same as.../ONE OK ROCK 映画『グッモーエビアン!』主題歌 ヒット曲を速攻ゲット!《NEW HIT SONGS》 066 瞬く星の下で/ポルノグラフィティ MBS・TBS 系アニメ『マギ』オープニングテーマ 068 Out of Control/Nothing s Carved In Stone フジテレビアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』オープニング 071 涙をぶっとばせ!!/桑田佳祐 072 The Bravery/supercell MBS・TBS 系アニメ『マギ』エンディングテーマ 074 にんじゃりばんばん/きゃりーぱみゅぱみゅ au「FULL CONTROL/REAL」篇テレビCM ソング 075 最後の私/阿部真央 TBS 系『CDTV』3 月度オープニングテーマ 076 Mr.ECHO/NICO Touches the Walls 078 新しい世界/植村花菜 サカイ引越センター「日本の引っ越し篇」CM ソング 080 Calling/嵐 フジテレビ系ドラマ『THE LAST HOPE』主題歌 082 ありがとう/FUNKY MONKEY BABYS 084 さよならメモリー/7!! テレビ東京系アニメ『NARUTO-ナルト- 疾風伝』エンディングテーマ 086 社会の窓/クリープハイプ 087 私の世界/かもめ児童合唱団 日本テレビ系ドラマ『泣くな、はらちゃん』劇中歌 ゴゴギの推しテーマはコレ!《今月のThe 特集!》 アルペジオがステキな曲 088 永遠にともに/コブクロ 090 Tomorrow s way/YUI 092 モア・ザン・ワーズ/エクストリーム 095 スカボロー・フェア/詠唱/サイモン ガーファンクル 096 あの素晴しい愛をもう一度/加藤和彦と北山修 098 アイスクリーム/高田渡 あなたの“弾きたい”にお応え!《 リクエストコーナー》 099 441/miwa 100 ダイヤモンド/BUMP OF CHICKEN 102 LEMONADE/THE BAWDIES 104 サムライハート/SPYAIR 106 バイバイ/7!! 108 世界はそれを愛と呼ぶんだぜ/サンボマスター あの神曲を弾いて! 歌って!《ボカロと弾き語ろう!》 109 千本桜/黒うさP feat. 初音ミク 永遠の名曲♪《Go!Go! 定番ソングス》 112 SPARKLE/山下達郎 113 22才の別れ/風 114 15の夜/尾崎豊 たまには独りで《魅惑のソロギター》 115 愛のロマンス(禁じられた遊び)/ナルシソ・イエペス 116 朧月夜/唱歌 117 八重の桜 メインテーマ/坂本龍一
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United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国 自作 最も南極点に近い南極基地「アムンゼン・スコット基地」。 名前の由来になったアムンゼンはノルウェー出身ですが、スコットはどこの国の出身? (2012年6月15日 ペーパーの問題の配置は難易度順じゃなくて俺から見てその言葉が近いか遠いかってだけ ) 映画『市民ケーン』の監督オーソン・ウェルズはアメリカ出身の映画監督ですが、 小説『宇宙戦争』で知られるH・G・ウェルズはどこの国出身の小説家? (2012年6月15日 ペーパーの問題の配置は難易度順じゃなくて俺から見てその言葉が近いか遠いかってだけ ) 代表作に『チャタレイ夫人の恋人』があるD・H・ロレンスはイギリス出身の作家ですが、 映画『アラビアのロレンス』のモデルとなったT・E・ロレンスはどこの国出身の軍人? (2012年6月15日 ペーパーの問題の配置は難易度順じゃなくて俺から見てその言葉が近いか遠いかってだけ ) 「超ド級」という言葉の由来にもなった戦艦ドレッドノートは どこの国の海軍が保有していた戦艦でしょう? (2009年9月6日 「 アタック25 in VIP 日曜フリーバッティング 」) 事故の多発する「バミューダトライアングル」で知られる バミューダ諸島は、何という国の領土でしょう? (2010年11月23日 ぶん投げ ) イギリス・フランス 1920年に発足した国際連盟の常任理事国と、1945年に発足した国際連合の常任理事国に共通する2つの国はどことどこ? (2012年9月1日 Twitterクイズ大会 ) タグ:国 地理 歴史 7 CWA賞 NOW Oasis Quizwiki 索引 あ~こ アデル アメイジング・グレイス アレクサンドラトリバネアゲハ イギリス イーストボーンの悲劇 エリザベスカラー オランダ オルレアン カラス カンチェンジュンガ キャヴェンディッシュ クライストチャーチ クラーレ クルースン ケン・イシイ コナン・ドイル コーンウォール一派 ゴルフ サラブレッド サンダーバード ザ・プロディジー シェイクスピア シェークスピア シューゲイザー ジェームス・ブラント ジェームズ・クック ジェーン・オースティン ジブラルタル ジミ・ヘーゼルデン ジャックフロスト ジョン・ル・カレ ジョージ・W・ブッシュ スカボロー・フェア スーザン・ボイル セシル・ローズ セックス・ピストルズ セレンディピティ ソルスティス ソードライン タタ・モーターズ ターディス ダンカン・ジョーンズ チキ・チキ・バン・バン チャーチル デュ・モーリア トニー・スコット トマス・ホッブズ ナイチンゲール ナナ ニューカッスル病 ニューファンドランド島 ネルソン ノーランズ パトリック・ヘンリー パンチ パーキンソン病 ピンク・レディー フランス フリートウッド・マック フレデリック・サンガー ブロンテ プラチナ婚式 ベンサム ベン・ジョンソン ペニー・ブラック ボクシング・デー ポツダム宣言 マグナ・カルタ マラウイ共和国 マンクス ミルウォール・ブリック ルーカス教授職 レッド・ツェッペリン ロアルド・ダール ロッド・テンパートン ローレンス・ブラッグ ヴィヴィアン・ウエストウッド 中華人民共和国 優生学 円卓の騎士 山猫軒 日の名残り 東京メトロ 空飛ぶモンティ・パイソン 苦力
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セイント・ジェムスMAP 下のメニューからどうぞ~ ◆王都エレスチアル ◆王都エレスチアル2 ◆クロサイト領 ◆テクタイト領 ◆ノーム村 クロサイト領 クロサイトには地図を表示する看板がありません。 カーネリアン司祭の墓・遺跡は、イベントがある時のみ行けます。黒文字は主要施設 緑文字は馬車停
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■チョボロー 性別:男性 アイテム:なし 属性:ドラゴン 設定 少食なこと以外は全てが謎に包まれた男。 口にジッパーがついているため少食な上に寡黙。 ステータス 攻撃力:7/体力:5/知力:2/FS(飢餓):1 特殊能力:『鬼一口』 口腔内が暗黒空間と繋がっており、口に入れたものをこの世から完全に消滅させる。 この能力はオートで発動しているため、チョボローは食事をすることができない。
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前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 一四四 君たちの乗る『ロリアン』号は無事にロサイスに入港し、『桟橋』――鉄骨を組み合わせて建てられた巨大な塔――に吊り下げられる。 ようやく肩の荷が降りたといった様子の船長は、君たちに別れの挨拶をする。 『ロリアン』号でラ・ロシェールに戻るアンリエッタ王女も、君たちの道中の無事を祈ってくれるが、その声は消え入りそうに弱々しい。 今の彼女の心の中では、君たちに対する罪悪感と、ウェールズ皇太子に会いたいという未練がましい思いが、複雑に入り混じっているのだろう。 「ルイズ……本当にごめんなさい。あなたたちの邪魔をするつもりはなかったのです。わたくしはなんということを……」 悔いるアンリエッタに向かって、ルイズが口を開く。 「姫さま、どうかご心配なく」 密航が明らかになって以来、ルイズが王女に話しかけるのはこれが初めてだ。 ルイズは表情をきっと引き締める。 「わたしたちは、必ず任務をなしとげてみせます。誰ひとり失うことなく、全員で無事に帰ってきます。それに、ウェールズ殿下も…… 殿下も、きっとご無事です。任務が終わってアルビオンが平和になったら……」 そこで言葉を切り、笑みを浮かべる。 「すぐに姫さまのもとへとお連れいたします――無理やりに引っ張ってでも!」 「まあ! そんな乱暴な」 アンリエッタは困ったように眉を寄せるが、すぐに笑いだす。 「だから姫さまは、トリステインにお戻りになったうえで吉報をお待ちください」 アンリエッタはこくりとうなずく。 「ルイズ、あなたは変わりましたわね。ただ自分の系統に目覚めたというだけではなく、昔に較べてこう、大胆になったとでも申しましょうか。 頼もしい使い魔さんの影響かしら?」 ルイズは顔を赤くして、 「何をおっしゃるのです、姫さま! この粗野で下品な使い魔は関係ありません!」と叫ぶ。 アンリエッタの密航で雲行きの怪しくなったふたりの信頼関係だったが、無事に持ち直したのを見て君はほっとする。 陽が低く垂れ込めた黒雲にさえぎられているため、アルビオンの空は暗い。 遠くからは、低い雷鳴が聞こえてくる。 周囲を漂う空気はじめじめしており、君は不快な蒸し暑さを覚える――前に来た時は涼しく爽やかだったのが、嘘のようだ! 『桟橋』を下りてアルビオンの地に立った君は、港から少し離れたロサイスの市街に目をやる。 『ロリアン』号の船長が言っていたように、町から煙が上がっているが、それは一つや二つではない。 火の手はいたる所から上がっており、それがただの火事でないことは、誰の目にも明らかだ。 ルイズは不安げな表情を浮かべる。 「やっぱり襲撃を受けてるみたいね。敵は≪門≫を使ったのかしら」 君は、そうに違いないと答える。 クロムウェルの恐るべき兵器である≪門≫の前には、戦の常識など通用しない。 どれだけ強固な城壁を築こうが、どれだけ戦場から離れようが、安全な場所など存在しえぬのだ。 「町は大変な事になってるみたいね」 キュルケが鼻に皺を寄せる。 「物が焼け焦げるにおいが、風に乗ってここまで漂ってくるわ。それに、太鼓と角笛の音も」 キュルケの言葉につられて耳を澄ますと、彼女の言ったとおり、荒々しく不揃いな音色が聞こえてくる。 その野蛮で力強い響きは、洗練された文化をもつハルケギニアにはおよそ不似合いなものだ。 君は不安に襲われ立ちつくす。 敵は、どれほどの兵力をロサイスに差し向けたのだろう? はたして、混乱の真っ只中であろうロサイス市街を、無事に突破できるのだろうか? ルイズとキュルケも君と同じ不安を覚えたのか、町への一歩を踏み出せずにいるが、カリンがそれを追い越す。 「急ぎましょう」 振り向きざまにカリンは告げる。 「ここでぼんやりしている暇はありません。とにかく市街を突っ切って、ロサイスの外に出なければ」 その言葉にうながされて君たちは足を動かす。二九五へ。 二九五 ロサイスは堂々とした石造りの建物が並ぶ、大きく立派な町なのだが、今はぶざまな混乱の只中にあり、まるで魔女の鍋だ、と君は思う。 どの通りも右往左往する兵士や荷役夫、町民でごった返しており、遠くから角笛や太鼓の音が響くたびに、人々はおびえて首をすくめる。 カリンは、目の前を急いで横切ろうとした兵士のひとりを引き止め、 「状況はどうなっているのです? 敵の規模は?」と尋ねる。 「わからんが、そこらじゅうから押し寄せてきているらしい。とにかく、やばい事は確かだ。早く町から抜け出さないと、殺されちまう」 額に汗を浮かべた兵士は、早口に答える。 「町を出るにはどうすれば?」 「北と西に門があるが、この呪われたアルビオンにはもう、逃げ場なんて残っちゃいない。俺は船に乗る。あんたらも急いだほうがいい」 そう言うと脱兎のごとく駆け出し、角を曲がって姿を消す。 カリンは溜息をつく。 「規律も秩序もありはしない……もはや軍隊ではなく、ただの烏合の衆。トリステインの栄光が、こうもやすやすと地に堕ちるとは」と、 苦々しげに漏らす。 キュルケは≪飛翔≫の術で二十フィートほどの高さに浮き上がると、町の北側と西側を交互に眺める。 しばらくして地面に下りてきたキュルケは、 「西門のほうがここから近いけど、町の西側は火事の煙だらけ。敵も大勢いることでしょうね。北側はまだ敵の手が回ってないみたいだけど、 門までだいぶかかりそうよ」と言う。 どちらへ向かう? 西(一九一へ)か、それとも北(三七七へ)か? 三七七 君たちは、互いにはぐれてしまわぬよう気をつけながら、北へ向かって走る。 慌てふためく人々が行く手をさえぎるため、道ははかどらない。 門や港を目指して逃げる者は、意外なほど少ない――それほど混乱しているのだ。 ある十字路の真ん中では、ひとりの将校が頭上で杖を振りかざし、 「集まれ! 隊列を組め! 敵を食い止めるんだ!」と兵士たちに向かって呼びかけるが、 まったく相手にされていない。 別の将校は魔法で屋根より高く飛び上がり、空から逃げようと試みるが、そこに翼をもつ大きな影が飛びかかる。 影は将校を捕らえると素早く飛び去り、犠牲者の悲鳴はすぐに聞こえなくなる。 「な、なによ、今の……」 一部始終を見ていたルイズが青ざめる。 「≪フライ≫は、もう使わないほうがよさそうね」 そう言って、キュルケは足を速める。 ロサイスの路地は曲がりくねっているが、君たちは確実に北へと進んでいく。 角笛と太鼓の音がだんだん大きくなっているのに気づき、君は小さく毒づく。 敵はすぐそこまで来ているのだ。 町の北側の壁まであと半マイルほどの所で、横あいの路地から町人の一団が飛び出す。 彼らは君たちの姿を目にすると、口々に助けを求める。 「貴族様、化け物どもがすぐそこまで! ああ、き、来た!」 町人のひとりが指さす方に目を向けると、甲冑をまとった背の低い生き物の群れが迫ってくる。 それは、浅黒く醜悪な顔をしたオークどもだ。 手に手に白刃をきらめかせており、見えるだけでも二十人はくだらない。 「皆殺しにしろ!」 隊長格らしき大柄なオークが胴間声を張り上げるのを聞いて、君は身構えるが、カリンの反応はずっと速い。 オークたちの隊列の中心に突然竜巻が現れ、怪物どもを吹き上げる。 竜巻は数秒のうちに道幅いっぱいに膨れ上がり、やがて、オークたちの姿はどこにも見えなくなる。 驚きと歓喜の声をあげる町人たちに、カリンは命じる。 「さあ、早く。あなたたちも来るのです」 彼らは、君たちと一緒に北門へと向かう。 「ねえ、ちょっと」 君の隣を走りながら、ルイズが話しかけてくる。 「あの亜人たち、人間の言葉を喋ってたわよね」 君はうなずき、≪タイタン≫のオークは、ハルケギニアのオーク鬼より小さくて力も弱いが、頭の出来と手先の器用さはずっと上だ、と言う。 オークは概して臆病で間の抜けた連中だが、貪欲かつ残虐であり、軍隊に組み込まれた時は油断ならぬ敵になる、と。 「そんな奴らが、今のアルビオンには何万もいるの……?」 ルイズの声が震える。 君たちの任務が失敗すれば、アルビオンだけではなくハルケギニア全域が、オークやその同類の怪物どもに踏みにじられることになるのだ。 五六六ヘ。 五六六 その後も何度かオークやゴブリンの小部隊と出くわすが、カリンの魔法はまたたく間に敵を一掃し、わずかな撃ち漏らしも、 キュルケの≪火≫の魔法によって仕留められる。 「異世界からの怪物といっても、大したことないわね」 額の汗をぬぐって、キュルケは余裕の笑みを浮かべる。 「油断は禁物です、ミス・ツェルプストー」 カリンは周囲に目を光らせる。 「雑兵といえど、甘く見ていると足下をすくわれぬとも限りません。ましてや、敵は我らにとってまったく未知の相手……」 そこで言葉は途切れる。 カリンの視線の先に現れたのは、ひょろりとした体つきの三人組だ。 暗い灰色の肌と尖った耳をもっているので、君には相手が黒エルフだとわかる。 黒エルフたちは三人とも革鎧に身を包み、両手に短剣を握っているが、ひとりは腰から奇妙な物をぶらさげている。 それは、太い針金を編んで作った小さな籠のようだが、中に何が入っているのかまではわからない。 黒エルフたちは吊り上がった目を細め、にっと唇を歪めると、短剣を構えて君たちのほうへと突進してくる。 「愚かな」 うんざりしたような口調でそう呟くと、カリンは杖を振るう……しかし、何も起きない! 一瞬あっけにとられたカリンだったが、すぐにもう一度呪文を唱えて杖を振り下ろす。 やはり術の効果は現れない。 「ここはあたしが!」 キュルケが呪文を唱えるが、炎どころか煙の一つも上がらない。 「ど……どうして?」 ルイズが悲鳴じみた困惑の声を上げる。 黒エルフは 「は!」と短く嘲笑すると間合いを詰める――三人で同時にカリンに斬りかかるつもりだ! すばやく決断しなければならない。 武器を抜いてカリンと黒エルフの間に割り込むか(四九三へ)、黒エルフのひとりに向かって何か武器を投げつけるか(三三〇へ)? 術を使うこともできる。 GUM・六八八へ ZAP・七三八へ RAZ・七五六へ DEK・七六五へ SUN・六四一へ 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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「あれ、唯先輩何しているんですか?」 昼が日に日に短くなっていたある日、部室に来てみると、唯先輩が頬杖をついて難しそうな顔をしていた。 普段はあまりみせない、なんともいえないアンニュイな表情だけれど、これはこれでたまらない。 私の脳内の唯先輩フォトブックに、またあらたな一頁が刻み込まれる。 運命のパートナーのこんな表情をみれば、人は誰もきっと輝くし、初めて自分にも出会えるのだから。 あとでこっそり写真にもとっておこうっと。 「あずにゃーん、たすけてたもれ…」 「いったいどうしたんですか?」 「えげれす人が悪いんだよ…」 と唯先輩に差し出されたプリントには、一面に英語の問題ばかり。 Imageine that you have a ring which enable you to become invisible at will. What... 「こんなの、訳せるわけないよー…」 「『はめれば思いのままに姿を消せる指輪を持っていると想像してごらんなさい』、ですよ、先輩」 「!」 唯先輩の目が輝きだした。 「あずにゃんすごい!英語分かるの!?」 「ほんのちょっとだけなら…。父の公演は英語のことが多くって。それに、スカボロー・フェアとか、音楽で結構覚えられるんですよ。」 「あーゆごーいんぐとぅーすかぼろふぇあーってやつ?」 「なんだ、知ってるんじゃないですか」 「歌詞の意味は全く知らないけどね!」 「威張るところじゃないです。『スカボローの市場に行くのですか』って聞いているんですよ」 「さすがあずにゃんだね!」 「何がさすがなんですか、もう、後輩に教えられてて恥ずかしくないんですか」 「面目ない…」 ああ、しゅんとしちゃった。照れ隠しに心にもないことをいった自分がにくい。 違いますよ、先輩に怒ってるわけじゃないんですよ。元気出してくださいってば。 先輩の笑顔がみたいんですから。 …と言えたら良いのにな。そんなことを思いながら、プリントに書いてある☆一つの問題を読み上げる。 「じゃあ先輩、『昨日私の祖母が中国に行きました』って英語にしてください」 「え…えーと…トゥ、Today」 「todayは今日です!昨日はyesterdayですよ」 「わ、分かってるよ…あずにゃんを試しただけです」フンス 「はいはい、分かりましたから早く答えてください」 「え、えーと…い、Yesterday,み、me ぐ、ぐ、grandmother…ブーン、ガタンゴトン、じゃなかった、boom, gattan-gotton,ちゃ、china go!」 Yesterday, me grandmother boom, gattan-gotton, china go. 前言撤回。これはおこらないとダメだ。 もっとも、この問題をみたとき、なぜだか分からないが、まるで自分が答えたかのような気がして恥ずかしくなったことは内緒だけれど。 「先輩、発音をこもらせてごまかさないでください!これ中学レベルですよ?」 「うう…あずにゃんしどい…」 「4人で同じ大学にいくんでしょう?」 「た、たまたまこの問題が出来なかっただけだよ、ほら、これだって出来てるし!」 ――Anything that you don t usually do but would permit yourself were you invisible owes less to ethics than it does to caution or hypocrisy. 『普段ならしなくとも仮に姿がみえなければしてしまうであろうことは、倫理よりも警戒心や偽善の心によるところが大きい。』 NO! Jesus crisis! Oh my god! なんであれが出来なくてこっちが出来ているのだろう。 これにしろギターにしろ、ほんとに規格外の人だ。 そういうところがたまらなく憧れる部分でもあるのだけれど、自分と比べて少し落ち込んでしまう。 「確かにそうですが、だからってさっきのはちゃんと答えなきゃダメですよ?」 「うう…」 「もう…まだ受験本番まで時間ありますし、元気出してください。」 「じゃあ元気のみなもと、あずにゃん分補給ー」 「もう、抱きつかないでください」 口ではそういっていても、もう体が動かない。無人島に漂着しても、こんな至福の時があれば一生楽しんで住めそうだ。 …でも、一生は、無理。先輩方は、来年、卒業する。私は、来年、ひとりぼっち。ひとりで、この部活を、やっていかなくちゃ、いけない。 そう、今だけだから。そう思った瞬間、勘定と涙があふれ出してきた。 今だけだから、私を抱きしめてください、唯先輩。私の思いを磨いてください。私の不安を、安心に着替えさせてください。 「あずにゃん、どうしたの、泣いてるの?」 「泣いてなんか、ないです。」 「あんまり、構ってあげられなくてごめんね」 「…」 「不安、だったんだよね」 「…」 「あとちょっとしたら卒業しちゃうけど、ずっと離ればなれになるわけじゃないからね」 「…」 「ほら、元気出して、歌ってあげるよ」 そういって唯先輩は、私を抱きしめながら、優しく旋律をなぞりはじめた。 ――Are you going to Scarborough Fair? ――Parsley, sage, rosemary and thyme, ――Remember me to one who lives there, ――For she once was a true love of mine. 小さいときから知っている曲だけれど、でも、全然違う曲。 私の耳は、この歌を聴くためにあったとすら思えるような、柔和な曲。 もっと、聴いていたい曲。 「1番だけじゃいやです、もっと歌ってください」 「あずにゃんはわがままだね、my motherだよ」 そんなことないです、唯先輩のほうが、お母さんですよ――。 唯先輩が“母”の子守歌をひとしきり歌ってくれた後には、日はもう沈みかかっていた。 「ありがとうございました、もう大丈夫です」 「えー、もっと歌いたいよ」 「先輩は、英語の勉強のほうが先なんじゃないですか」 「じゃあ、あずにゃん歌ってくれたら頑張るよ」 「何がじゃあなんですか」 「歌ってくれないの?」 「…」 「…」 「…分かりましたよ、歌います。そのかわり、ちゃんと歌詞を聴いててくださいね」 スカボロフェアーは、遠くに住む、知り合いへの曲。 でも、それだけでは嫌だから。 だから、歌詞を少しだけ変えて。 ――Are you going to Scarborough Fair? ――Parsley, sage, rosemary and thyme, ――Remember me to one who lives there, ――For she s forever a true love of mine. 私の恋人になってください。遠くにいても、私の恋人でいてください。 「ねえ、それってどんな意味?」 分かっているのかいないのか、唯先輩は、天真爛漫な笑顔。 ちょっと、自分が恥ずかしくなる。 「な、何でも無いです!」 END なぜえむえむ -- (名無しさん) 2011-02-24 19 58 08 唯のひらがな英語発音は可愛いw -- (名無し) 2012-08-13 19 47 36 がたんごとんww -- (あずにゃんラブ) 2014-01-01 18 06 25 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
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